Blueberry Field  土岐 友浩

Starless Coffee (21)
浴衣着のきみが花火の先で書く光の言葉けむりのことば
コーヒーを飲まなくなったその日からなにかなくしてしまう気がする
土曜です。モスバーガーです。この街はひとに逢いたがるひとであふれる
はつなつのスタッフさんがきんいろのフレンチフライポテトを詰める
アスファルト舗装の道のぐだぐだの遠くにはばかでかい予備校
Xerox a Xerox of a Xerox of a Xerox of a Xerox.
夏うさぎフローリングのいちまいの板をえらんでまっすぐあるく
ほほえみやスマイルよりもかけがえがないのだきみの無表情それは
まだぬれた髪にブラシをあてている 僕がねむいと言ったばかりに
首もとのうすいボタンをはずしたらゆびさきにのりうつったひかり
僕はいくつになっても夏を待っている 北蠅座というほろびた星座
ミルティーユころがりとまりこいびとっていういちばんほそいつながり
八月の郵便受けに真ッ黒のインヴィテーション・カードが届く
古着屋のクロゼットから引きだした黒シャツくろ焦げのべろべろの
きれいめはきたない。きたなめはきれい。麦わら帽の金色リボン
ともだちとシェリル・ラッドが左右の眼どちらでウィンクするかを賭ける
追伸のメールは遠いカフェに消え 僕のことばの行方をおもう
まだ持っていたんだそれはデニーズのおもちゃうりばで買ったピングー
スターバックス・コーヒーの壁に書きおぼえようこの飲みものの名を
おかけになった番号は八月の届かないため繋がりません
夏に舞いおちるのはひかり 遠花火 消えるからってはかなくもない
Freedom From (7)
母とふたり真ッ黒のボストンバッグ引き出している バスの腹より
だいぶまえそのすべりやすいスカートのうえにすわってみていたマンボウ
ゆうぐれのこの手にできる複雑な影をみている医学生僕は
【問題が発生したため、Microsoft Internet Explorer を終了します。】
この問題を Microsoft に報告してください。(母がもう死ぬんです)
高瀬川一気に暮れてうつくしい落ち葉をさがすともなくさがす
ふしぎな音のする明け方の病棟の長い廊下を僕は知らない
風の朝ディズニーランドのパラソルのポールに母の名前をしるす
Bird Worldwide (21)
ヒイラギの小さな白い花をみる冬の空から光を借りて
僕を呼び棄てる人なし アカシデの小枝を冬空に挿してやる
禁煙のカフェはうるさい 幻冬舎文庫を読んでがんばっている
ろくでもない人がろくでもないゴミを捨てるからろくでもないカラス
真ッ白のヘリコプタから日にいちど空気清浄剤が撒かれる
午後につき公園だから鳩なのでパン屑たべる 肉を脱ぐまで
ウエハースいちまい挟み東京の雑誌をよむおとうとのこいびと
おとうとのこいびとはふといつものファー・ボレロがないとねむれなくてと
たぬき寝入りしているねって声がする きっと寝ていてもそう言っている
こいびとの黄色い傘をもったままイルミネーションへ移る心は
高くから雨ふりかかるクリスマス・カードふたつに折り京都駅
とうめいな傘越しにみるこの雨の降りかたを指す語彙がもうない
てぶくろの首から呼気を吹きこんで手袋はめるさよならずっと
(干潟からきらきらと舞うアスベスト)鳥は戦争なんて知らない
雲のかけらふる一月の明け方はジョギングしたいくらいさびしい
真夜中のいまからねむるおとうとを相手にデニーズでうでずもう
くもりびの窓辺へ『アムリタ』を読みにゆく 机から椅子をはがして
マンションのエントランスに降り立つは二月ピアノを引き取る業者
こいびととふられたなりになかなおり 最初の星に手をふれてみる
月が深呼吸している冬の夜きみいわく月がおしゃれしている
「おやすみなさい」というメールのおしまいに獏の絵文字をつけて届ける
"Blueberry Field" Fin.
 
短歌